価値基準がブレるから混乱する

米国のトランプ大統領が誕生することになり、世界中が上へ下への大騒ぎ、一番驚いているのはトランプ本人という説まであり、本人すら予想しなかったことが、それも世界をリードする大国アメリカの大統領の身で起きたのですから、笑い事では済まされない事態ではあります。

朝礼で政治の話をするつもりはありませんが、トランプ氏を大統領に押し上げた大きな要因は伝統的なアメリカ型価値観の崩壊と私は思います。
世界の民主主義を守り平和に貢献する、すべての人は平等であるという価値観が今日のアメリカを作りました。
自由の国アメリカに憧れ、移民が集まる一方で、人種を超えた優秀な人材もアメリカに渡り、安い労働力と高い知識集約の同時進行によって強い米国が形成されていった。
稲盛塾長も第二次世界大戦において、私達は多民族国家のアメリカ人は腰抜けの寄せ集まりと教え込まれたが、実際のアメリカ軍人は民主主義と平和を守るという高い理想を掲げ、実に勇敢に戦った、大義が米国に勝利をもたらしたと語っています。
そのような大義が７０年を経て、長く続いた世界での紛争への関与による疲弊と米国の格差社会の進展とによって崩壊した。
いわば国の背骨というべき価値観が折れてしまった。
世界の民主主義を守ることを放棄し、人種差別的に移民を排斥する人物を指導者に選ぶということはまさにそういうことなのでしょう。
米国がモンロー主義に陥った時、必ず世界はカオス状態へと陥っています。
おそらく今回も世界的に混乱し、経済的にも混迷状態になるでしょう。

そのような状態にあっても当社は力強く成長していかなければなりません。
そのために重要なことは米国のように価値観をブレさせてはならないということです。
こうして毎朝経営理念を唱和し、皆でフィロソフィを学ぶのも、当社としての価値基準を互いで確認し、信念にまで高めるためにしているのです。
混乱と混迷の時代にこそ、経営理念とフィロソフィの意義を、そしてその大義を忘れてはならない一点だと思います。
そうであればどんな困難な時代でも乗り越えていくことができると信じています。