心に描いた通りになる

先月の社内フィロソフィ研修会の項目に「心に描いた通りになる」がありましたが、私はこの項目と人生の成果の方程式が稲盛哲学の一丁目一番地と言ってもいいのではないかと思っています。
この項目が腹に落ちないとなかなかフィロソフィへの理解も深まらないし、まして実践とはならない。
松下幸之助は「自分の周囲に起きる事象すべて我が心の反映である」と言い切り、中村天風は「ただ思え、ひたすら気高く、ひた向きに」と言っています。
ダム式経営論の講演会でダムの作り方を問われて、松下さんが「そう思わんといけませんはなぁ」と答えたエピソードは、まさに心に描いた通りになるの真髄と言っていいでしょう。

私は３０歳前後の頃、好きでなった新聞記者の道を断念しようとしていた頃になるのですが、自分の人生にはつきがないのではないかと悩み人生を変えたい、自分を変えたいと思って、自己啓発本や心理学系の本をよく読み、確か東海大学教授の謝世輝さんの本だったかと思うのですが、色々読んだので違うかもしれませんが、「思わぬことはかなわない」という言葉に出会って、つくづくそうだと納得したので、この心に描いた通りになるというは違和感がなくすっと入って来たと言うか、偉い人はみんな同じことを言うのだなぁと納得したものです。
これが納得できると人生の成果の方程式の考え方が大事だということにも合点がいくはずです。
明るい考え方の人は何にでも楽しさを見い出し、当然、類は類をよんで周囲も明るくなり、明るく楽しい人生となるし、暗い人、怒る人、愚痴っぽい人は人の情けを受けてもそれすら理解できず、所詮、そこまでのあまりうらやましくない人生となる。
若い皆さんの周りでもそれはそうなっているはずです。

では、それはそれでいいとして、次のポイントが因果応報です。
ジェームスアレンでは原因と結果の法則です。
これが次のハードルとなりますが、多くの人はこれでつまずくというか、立ち止まってしまいます。
稲盛さんも因果応報については、理屈ではなく宇宙の法則だと理解するしかないと、説明の難しさを認めています。
でもこれが腹に落ちないとフィロソフィの多くの項目が自分の心に入って来ません。
なぜそれほど大事かというと、これが思うことの質、考え方の質を決定的に左右し、人生の成果がもたらす大きさとその期間を決めるからです。
心に思い、努力すれば思いは実現するわけですから、利己的で自分だけが儲かればいいと思っても努力すればそれは実現するのです。
従って目的実現のためだけを言えば別に利他的である必要ないわけです。
私自身もそうは言ったってなぁ、あくどい商売で儲けて派手な生活している社長さんも一杯いるじゃないかと思った時期がありました。
ただ、私の周囲を見ても、そのような利己的な人、自分のことしか考えていない人は、その成功が長く続くことはないと思います。
１０年、３０年のスパンで見ればその通りだと思います。
よしんば続いていたとしても物的に幸せではあっても心まで豊かで満ちているとは思えない生活ぶりです。
つまり善という因があって善という結果が生まれる、悪という原因が、悪しき人生を招くというごく単純な法則がそこには存在していると思えるかどうかです。

従って死ぬまで幸せで、有意義でかつ穏やかな人生でありたいと願うのであれば、他者への思いやりのある利他的な生活を送らねばならないし、そのために日夜謙虚に反省し、心を磨かなければならないというわけです。
そうなるとフィロソフィの多くの項目の関連性が見えてくるし、最終的には「宇宙の意志と調和する心」というある種、時空を超えた人生の帰結点も見えてくるような気がします。
善思善行、これは当社のお客様のＹ社さんの社是でもあります。
稲盛塾長すら伝えにくいものを、私が上手く説明できたとは思えませんし、押しつけがましく聞こえるかもしれませんが、何とかここを当社の社員の方には是非、理解して欲しいと願わざるを得ないし、自分自身も理解だけでなく実践しなければならない大切な項目だと思っています。