システムや機械の声に耳を傾ける

このフィロソフィで出てくる重要なキーワードは「調和の感覚」です。
これがシステムや機械の声を聴ける感性を身に付けるポイントのようです。
日常的に調和がとれていないものに違和感を持つ感覚が養われているかどうかなのだと思います。
この調和の感覚について、極めて狭義な調和と宇宙の意志との調和というようなスケールの大きな調和の両方が稲盛フィロソフィには登場します。
この二つの調和の理解が難しく、悩んだのですが、残念ながら塾長もその点を明
確には説明されていないように思います。
従って私独自の解釈ですが現時点での私の理解は次のようなものです。
例えば机の上の書類ひとつの置き方、さらには服装や身なり、立ち振る舞いあるいは床に落ちているゴミひとつが気になるといった細かいことまで気がいっているかどうか。
決まりごとはちゃんと守り、ミスのない仕事ぶりなのかどうか。
まさに有意注意の徹底ですし、あるべき姿と調和がとれているかどうか察することができる感覚や感性です。
これは狭義な意味での調和です。
この感覚が磨かれた人が大胆なことに挑戦していくと上手くいくが、鈍感な人は結局、事は成就しないで大きな失敗をやらかします。
まさに大胆さと細心さを併せ持つという調和の素晴らしさです。
物事の正否、人生の成否と言ってもいいかもしれませんが実はこの調和の感覚、ここから始まるような気がします。

つまり狭義な調和から一気にワープするのではなく、少しづつ調和の感覚が昇華していくというイメージでしょうか。
そうすると機械のちょっとした異常音にも気が行く感性となる。
プログラムの方から間違っていると言って来るような気になる。
細心さと大胆さに限らず、燃えるような闘魂と利他の優しい心が調和して素晴らしい成功を手にするといったことも起きてくる。
両極端な感性が調和を繰り返していくことで最後は宇宙の意志にまで調和できる感性を身に付けることができるということなのだろうなぁと思います。
整理整頓といった小さな気配り、心配りが、実は宇宙の意志との調和という一種の悟りのような境地にまで至る道のりの第一歩なのです。
まさに真理は細に宿るというのはこのことを言っているのではないでしょうか。
塾長が整理整頓、清掃をやかましく言った理由はここにあるのです。

先日テレビでアップルを創業したスティーブジョブズがアップル再生に際してやったことは何か？それは清掃、整理整頓であったと流していましたが、彼は仏教、なかでも禅に傾倒していたことは非常に有名で彼はパソコンの中のマザーボードの配置にまで美を追求したといいます。
お客さはそんなところまで見ないという周囲の批判に見えないところに手を抜くのはプロではないとはねつけたと言います。
彼は間違いなく調和の感覚を禅から学んだのだろうと思います。
福井の永平寺に参拝することが彼の夢だったそうですが、それをかなえる前に彼はなくなりますが、稲盛塾長も宗派は違いますが禅宗の得度を受けています。
単なる偶然ではないでしょう。
私は基本は雑ぱくな性格だと自覚していましたが、これはトップとして大きな欠点だし、人としての幸せになる思考を身に付けるためにも大きな阻害要因だと、フィロソフィを学ぶうちに深く認識するようになりました。
この欠点を治さないと調和の感覚を身に付けるまでには至らないと考えています。
私なりにこの欠点を直すためかなり努力しているつもりです。
自分の性格の欠点なんてそう簡単に治るものではありませんから大変です。
毎朝、禅定のつもりで仏壇の前に座り、夜は一日の反省を繰り返しています。
毎朝、真剣にトイレ掃除をしているうちに、廊下や部屋の隅に落ちているゴミひとつが気になるようになり、元々、他人の表情とかの変化には敏感でしたが、ちょっとした言葉の齟齬やあやふやな物言いにもおかしいのではないかと気が行くようになりました。
もちろんまだまだなのですが、いい加減になあなあで済ませる癖をつけてはいけないと自分を戒めています。
時々失敗もしますが、本人とすれば昔に比べればかなりよくなったと思っています。
皆さんも是非、整理整頓や真剣な清掃等々、どうか細心な気配りを常に頭に置いて生活を送るように心掛けてみてください。
調和の感覚は必ず皆さんに素晴らしい人生を約束してくれるはずです。